最近、英語学習において「SLA(第二言語習得研究)」という言葉を耳にする機会が増えましたよね。
個人の体験談や根拠の薄い理論ではなく、科学的な知見に基づいた第二言語習得研究のアプローチは、その実用性・効果の高さで注目を集めている学問ですが、その詳しい概念やメリットはまだまだ知られていません。
そこでこの記事では、そんな「SLA」を英語学習に取り入れることの具体的なメリットから、SLAの考え方の基礎、そして「これからSLAを本格的に学びたい」という方におすすめの本やスクールなどを紹介していきます。
SLA(第二言語習得研究)とは?
SLAはSecond Language Acquisition(第二言語習得)の略で、その名の通り、人間がどうやって第二言語を習得していくかについて研究する学問のことを指します。
母語とは別の第二言語(6歳以降で習得する言語)を習得するまでのメカニズム・過程を研究し、心理学、行動科学、言語学などの様々な領域から「どんな方法が語学学習に最も効果的なのか」を科学的に解明。
研究の歴史自体はまだ浅いですが、多言語社会であるヨーロッパ・アメリカなどを中心に、ここ数十年の間で研究が急激に進んでいる研究分野です。
参考:第二言語習得の理論
SLA(第二言語習得研究)を学習に取り入れるメリット
SLAの理論を英語学習に取り入れることのメリットとしては、主に下記の2つが挙げられます。
- 研究に裏付けされた正しい学習ができる
- 短期間で高い学習効果が期待できる
研究に裏付けされた正しい学習ができる
SLAの理論は、これまでに言語学の専門家達が長年に渡って研究を重ねた末に導き出した、いわば言語学習の答えのようなもの。
ネット上によくある個人の体験ベースの学習方法も確かに参考にはなりますが、そういった個人の経験則に基づく学習方法とは違い、科学的な理論によってその根拠や再現性が裏付けされています。
手当たり次第に気になった色んな学習法を試すよりも、最初からその正確性が保証されているSLAの理論を用いた方が、より正しい方法と言えます。
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短期間で高い学習効果が見込める
SLAは「どうやって英語を学べばより効果がでるのか」を突き詰めた学問なので、従来の学習量をベースに考える方法とは違い、少ない手間・時間であっても効果が出やすいです。
もちろんSLAを学習に取り込んだからといって、魔法のすぐに英語が身につくわけではありませんが、SLAを用いた学習は、ゴールから逆算した最短ルート学習なので、たとえ同じ時間の学習でも、その質には大きな差が生まれます。
それ故に、SLAを用いた英語学習は学習者の間で注目を集めているのです。
SLA(第二言語習得研究)で重視されている2つの考え方
ここまでSLAの魅力を語ってきましたが、実を言うと、SLAはまだ解明されていない部分も多く、完全な結論(多くが仮説となっている状態)は未だに出ていません。
しかし、現在では
- インプット仮説
- 自動化理論
の2つの仮説を掛け合わせた「大量のインプット学習と少量のアウトプット学習」が最も効果的であると言われており、実際の現場でもその仮説をベースにして学習を進めるところが多いです。
インプット仮説
インプット仮説は、言語学者のスティーヴン・クラッシェン氏が提唱する、「言語の習得は読む・聞くのインプット学習がメインであり、アウトプットは言語習得に寄与しない」とする仮説のこと。
学習者が現状で理解できるレベルよりも少し高いインプットの学習を行い続けることによって、初めてその言語の理解が深まり、その結果として初めて、話す・書くのアウトプットができるようになる。
つまり、言語習得にはアウトプットよりも大量のインプット学習が必要不可欠であるという理論です。
自動化理論
自動化理論とは、「学習した知識を反復練習(アウトプット学習)することで、意識せずとも理解・使いこなすことができるようになる」という仮説のこと。
例えば、一番最初に習うbe動詞の「am/is/are/」の使い分けは、最初こそ知識として覚えていきますが、何回も練習を繰り返し定着させていくことで、
- I(一人称) =am
- We/You(二人称)= are
- He/She/It(三人称)=is
などといちいち考えずとも、頭の中で瞬時に使い分けができるようになっていくという理屈です。
SLA(第二言語習得研究)について詳しく学べる本
上記の2つの仮説が現在では重要視されていますが、これ以外にもSLAにおいては様々な仮説が立てられています。
英語学習のメカニズム: 第二言語習得研究にもとづく効果的な勉強法
明治大学教授の廣森友人氏が、第二言語習得研究に基づく効果的な英語学習法や学習メカニズムをまとめた本。
第二言語習得におけるプロセスから、インプット・アウトプット、学習スタイルや動機づけなどの重要分野を体系的に学習することができます。
英語教師のための第二言語習得論入門
言語学者である白井恭弘氏が、学校教育者向けに書いたSLA(第二言語習得研究)の入門書。
第二言語習得研究の知見に基づく科学的なアプローチの基礎を丁寧に解説しています。
マンガでわかる 最速最短! 英語学習マップ
タイトルの通り、第二言語習得研究の基礎をマンガで学ぶことができる本。
第二言語習得研究をベースにした学習塾を展開する「スタディーハッカー」が出版しており、若干スクールの広告が多めなものの、SLAの基礎や誤った英語学習方法についてわかりやすく解説しています。
SLAをカリキュラムに取り入れている英会話スクール3選
SLAを用いた学習は確かに効果的ではありますが、そうは言っても専門的に学ばない限り、学習方法の趣旨選択も難しいですし、社会人の方なら、そもそもそんな勉強をしている時間自体が無いという方も多いかと思います。
そこでここからは、第二言語習得研究をカリキュラムに取り入れた英語学習プログラムを受講することができる英語コーチングスクールを3校紹介しましょう。
- イングリッシュカンパニー
- プログリット
- STRAIL(ストレイル)
もっともおすすめする英会話教室・スクール 一人一人の目的に合わせたおすすめの英会話サービス 英会話を効率よく学習する方法 地域・最寄り駅別におすすめの英会話教室 英会話スクールの選び方 この記事[…]
第二言語習得研究の元祖「イングリッシュカンパニー」
おすすめ度:
ENGLISH COMPANY(イングリッシュカンパニー)は、英語コーチングスクールの中でも、最も早くからSLA(第二言語習得研究)をカリキュラムに取り入れていたスクール。
大学・大学院で言語学や応用言語学を専門的に学んだエキスパートをトレーナーに採用し、生徒ひとりひとりに対して最適な学習が行えるよう、課題発見から弱点分析、そして実際のトレーニングまで、トレーナーが付きっきりでパーソナル指導してくれます。
難関大学や医学部の学習塾として有名な「スタディーハッカー」が運営を行っており、他のスクールと比較しても、学習量にあまり依存しない「時短トレーニング」を特に重視しているのが特徴です。
第二言語習得をベースとしたカリキュラムとレッスンを提供しているイングリッシュカンパニー。 第二言語習得研究の知見に基づいたサポートを提供する英語コーチングスクールの元祖的存在で、無駄を省いた超効率的な英語習得ができるとして人気を集めて[…]
理論に基づいた無駄のない学習コンサル「プログリット」
おすすめ度:
プログリットもイングリッシュカンパニーと並び、短期集中のコーチング系スクールの中で人気を集めています。
こちらも応用言語学や心理学といった分野の知見をカリキュラムに応用し、現状の課題分析から学習ゴールの設計、そして目標を達成するための学習をトータルでサポート。
また、プログリットでは、月に約80時間(1日約3時間)をこなすなど、学習量自体も多めなので、プログラムを通じてライフスタイルの改善や習慣化のスキルを身につけることができます。
3ヶ月間の集中学習で効果的な学習ができることで、社会人を中心に人気を博している英語学習サービスがあります。 それが、英語コンサルティングに特化した英語コーチングスクール「プログリット」です。 以前、TOKKUN ENGLISH([…]
STRAIL
おすすめ度:
STRAIL(ストレイル)は、イングリッシュカンパニーのスタディーハッカーが運営する、廉価版型のスクールです。
イングリッシュカンパニーのカリキュラムはそのままに、サービスの一部(パーソナルトレーニング)を削り、コンサルティングに特化したことで、その分の料金が抑えられており、本家イングリッシュカンパニーと比べても通いやすくなっています。
こちらも指導を行うトレーナーは、皆言語学の専門家レベルの方達ばかりです。
科学的な英語学習で有名なイングリッシュカンパニーの廉価版サービスとして、ここ最近徐々に店舗数を増やしているのがSTRAIL(ストレイル)です。 この記事ではSTRAILの新宿スタジオで筆者が実際に受けた無料体験の内容や感想、ス[…]
まとめ
第二言語習得研究に基づいた英語学習は、これまでの闇雲な「学習量」や「アウトプット」を重視する語学習とは違い、科学的なアプローチから導き出した学習手法です。
何回か言っているように、SLAを学習に取り入れたら劇的に英語が上達するというわけではないのですが、それでもこれから英語学習を始める方にとっては学んでおいて損はない、非常に有益な手法であると言えるでしょう。
ですので、まずは全体の概念だけでも把握しておき、英語学習の考え方のベースをしっかりと固めておくことをおすすめします。